東京高等裁判所 昭和29年(う)616号 判決
被告人 長谷川昌一
〔抄 録〕
論旨第二点について。
原判決が判示第二の十四の内別表二乃至七の事実につき酒肴を騙取した点は刑法第二百四十六条第一項に、遊興の点は同法第二百四十六条第二項に該当し、右は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるとして法令の適用を示していること、本件のように一個の欺罔行為を以て財産上不法の利益を得、且財物を騙取した場合は、これを刑法第二百四十六条に該当する単一の詐欺罪として論ずべきものであることは所論のとおりである。しかし、本件記録に徴するに、本件のように本来一罪として処断すべき行為を一所為数法にあたる行為として処断したとしても、右法令適用の誤りは判決に影響を及ぼさないものと認められるのであるから、これを以て原判決を破棄する理由となすに足りない。要するに右論旨もまた理由がない。
註 本件犯罪事実は、犯人は酒肴代金支払の資力も、またその意思もないのに、これあるように装い遊興をして酒肴の提供をさせ又芸妓の接待等をさせて酒肴の騙取と遊興による財産上の不法の利得をした点であつて原審は前者を刑法第二四六条第一項に後者を同条第二項にあたるものとして刑法第五四条第一項前段を適用している。